2008年 07月 24日
追試
右ドッグレッグの大渕。
開きのスカムラインの下に中くらいのヤマメが何匹か付いていて、ビビリながらもたまにライズしている。
彼らは人間どもがやってくるルートと立ち位置と、そしてその後そこでいったい何をやるのかを知っている。
俺はそのウラを斯いてちょっと上流の藪の中からアントパターンをそろりそろりと流し込んでみた。
つつーと寄ってきて「あっ!」と叫んでちょっと引っ込み「うーん?」と唸りながら訝しげに再度近づき、ちょこんと突付いて「やっぱやめとこっ。」と呟いたきり深みに沈んでしまった。
それを見ていた他の何匹かも「なになに?やばいのー?あっ、あれか。」とばかり後へ続く。
よしよし、試験合格!大変良く出来ました。
夏の定番といわれるブラックアントパターン。
過去にアントで釣られていなければまさに夏場の最強パターンなのだがいかんせん、その覚えやすいシルエットゆえ長い事記憶に残ってしまうのだ。
彼らは以前、俺にアントで釣られていたのだ。
ラインをクリーニングしティペットを取り替えた数分後、ちょっとヒネリを効かせたフライを送り込んでみる。
追試でーす、これはどうかな?
・・ぱくり あれあれ。
・・かぽり おいおい。
・・ばしゃり! こらこら。
やれやれ、そんなんじゃ全然ダメ~、またテストに来ますからねー。
まだまだ修行が足りないのだった。
さてその上流部のテニスコート1枚分はあろうかと言う木々に囲まれた見事な溪相のグリーンホール。
暫く見ていたら真ん中の緩い流れでバシャリ!とやった。
よっしゃ居る、どうやら広いスペースをゆっくりとクルージングしているらしい。
よしっとばかりちょいと動いたら、僅かに差し込む木漏れ日につーと動く太い影が見え、それが流れ込みの白泡のカーテンの中に吸い込まれていった。
え?しまった、まさか?ウソだろ・・・。
ヤツとの距離は30m程、光と影と距離の具合からまさか見えたとは思えないが、見られたとしか考えられないあの動き。
くっそーやるな、さすが伊達に長生きはしてない、よーし獲る、獲ってやる!燃えてきたぞぉおお!!!
実はビックリさせずに気配を悟られる程度で白泡に潜り込まれた事は、逆にこっちには有利に働く。
攻め続けられているからこそ、そこに油断が生まれる、付け入るスキが出来る。
何よりも間合いを詰めやすくなった事がありがたい。
取り替えたばかりのティペットを口の中を通して再度チェック、キズ無しOK。
フックポイントも一応確認したものの、念のためフライごと新品にチェンジする。
チャンスは多分1度きり、ドラグが掛かって怪しまれたらもうヤツは出ない。
バックスペースを確認し下流に流したラインをロールキャストで水面から剥がしワンアクションで瀬頭へ滑り込ませる。
こんな時、ロングロッドは楽でいい。
・・・もこ・・・っとでたぁああ!!
思いっきりラインを手繰って余ったそれを口に咥え下る魚の反対の上流へと駆け上がる、頭をゴンゴン振りべらべらとヒラを打ちながら瀬の開きをぎゅううう~~~んとヤツは走る、逃げ場を求めて石裏へと入り込もうとするのをバットの粘りでもって引き留め川中に走り込んで石裏から追い出す、行き場を失ったヤツは岸際を上流へと走り出しなおもごんごんごんと頭を振る。
おー、おこってる怒ってる、さほどローリングせずひたすら針を外そうと頭を振るヤマメは久しぶり、本気で怒ってるのだ。
しかし上流に行っちゃったらこっちの思う壺。
程良く走らせロッドを立てて空気を吸わせたらターン返しであっさりネットイン。
「ふぅ~~、やったぜ。」
「くっそー!」
前回は自信あるパターンが見切られ鼻先で笑われ、散々な結果だった。
「先生そんなに怒んないでくださいよー、で今回の追試、どうでした?」
「はいはい上出来まんまとやられました、合格。 ちぇっ。」
「だからそんなに・・・またお願いしまーす!」
by koubouquest
| 2008-07-24 16:55